644/660
群碧
翠の残滓 朱く染められて
僅かに滲む影が足跡を残した
冥に浮かぶ疎らな光さえ
今見るには眩しくて
果てに交わる薄明の下
淀む白影の上を行く
琥珀の音 晴を打ち付けて
凍えた碧が濡らした名残り
静寂さえ呑み拡がった
東雲の向こう側 潜り抜けて
今日の景色へ目覚めていく
熱を帯びる言葉 空を焚いて
視界を遮る気霜を焦がした
曙の光 枯を溶かして積もる
影を踏み抜く足音が遠ざかる
身を縛る温もり 錆びた光沢が反射して
薄墨の足跡の中に彩を落とす
芽吹くそよ風に身を晒して蒼を辿れば
何時ぞに見た原風景 ここに至る
翠の残映 朱を塗り替えた