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今晴
乾いた景色の中に身を投げ入れる
かすかな晴れが心身を掠めて
淀んだ微睡みを取り払う
朝まだきの空から差し込む光が
視界の前の霞を晴らした
小鳥の囀り 虫の羽音 木を凪ぐ風
鉄の擦過音に誘われて町中へ轉ろう
あまねく五感が満たされていくよう
未明の風が夜明けを連れて行った
今日の境目を超えて東雲の影を越えて
疎らに起き出す地の星 聞こえる声
静寂が豊寿ぐように残した蒼穹の下
町は晴れに呑まれて時間を削ぐ
季節が塗り替え 世界が動かす
されど消えじと今日もこの景色の中に
乾いた音はいつしか芽吹くこと
澄み渡った始まりの先へ足を踏み入れる
この跡にまた晴れが降ることを夢見て