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マイデンティテ
息を呑む 心を吐く
波打つ音に耳を澄ませる
幾年も続く鼓動が
今日を生きよと木霊する
すれ違う見知らぬ影
忘れていく誰かの横顔
寂しさにまで溶け込んで
足跡も見えなくなっていく
消えていくもの いくつもの
こぼれ落ちた声 地べたに積もった
泥濘が足を掴んで離してくれない
失ったもの 多くのもの
ずれ落ちた温もり 風にかき消されて
意味も忘れた涙を流す
誰かの言葉を呟いても
何も戻りはしない
誰かの言葉を借りても
何者にもなれない
摩耗していく瞬き
一瞬 一瞬の景色が掠れて
明日に奪われていく