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雨を借る
曇天の光が差し込む
疎らに降る雨音が
穏やかさに陰りを募らせる
ため息交じりのぼやき
挨拶代わりになるものだろうか
雨粒が地面を叩く度
足音がそれをかき消していく
散り積もった花びらが足跡を残す
束の間に消えるものと知れど
道端は鮮やかだった
疾風に傘を返されて
前のめりに目を遮る
一瞬の暗転の中 狐が笑い去る
遠方に見え隠れする青を見た
一時間にも満たない景色の移ろい
曇り空の中に碧は混ざる
濡れた窪みを残し雨音は止む
畳んだ傘の雨粒が裾を濡らす
見上げた空は綺麗だった