634/660
幸せの抜け殻
幸福を見つけるたびに
心が一つ曇っていく
現実に不満があるわけでも
明日に不安があるわけでもないのに
何かが物足りないような
何か抜け落ちているような気がする
理由のわかない空白が穴を開けたまま
夕日が堕ちていくのを眺めていた
自分にあった夢を見ていた
それ相応に叶った未来を生きる
少しくらい挫折はあった
人並みには傷付いてきただろう
成長はしていく でも老いていく度に
名前も正体も分からないものをずっと
足元に溢しているような感覚がまとまりつく
形もないものに囚われ続けている
気になっては探して
見つからないと繰り返して
見えないものにいつしか固執する
一歩進む度にそれが気になって振り返る
後ろ髪を引っ張られているような
でも背中を強く押されるように戻れない
矛盾が何かを蝕んで 言い表せない感情が
目の前に覆いかぶさっている
言いようのない感覚を抱えながら
なんとなくそれを探すように生きていく
何もない空白を広げたまま
憂鬱な幸せを避けるように何かを忘れながら
また一つため息をこぼしていた