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銀を踏む
銀を踏む
白露が滲み
吐息が曇り
視界を白く埋める
悴む手を添えた
地面を踏み締める度に
足が深く跡を残す
固まる音 引き抜いた足
飛び散る白銀が陽に曝される
肩に積もる寒さを払い
懐かしき景色を行く
白く銀色に瞬く景色に
忘れていた童心を思い出す
年甲斐もなくただ無邪気に
宛もなく足跡を残す
ただこの時を遊ぶように
凍える息を吹き飛ばす
轍の跡も掻き分け分けれた軌跡も
白く銀色に塗り替えられていく
埋もれていく 空のように
燦々と輝く陽が笑うよう
それは誰もが見ている光景
見上げていたはずの空
長い内に忘れていたようだと
そっとただいまと呟いた