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朝昏の前を行き
暗闇を開ける
疎らに灯る点滅を目指して歩く
突き刺すほど冷たい風も
今は行く先を示す道標
世界よりも早く目覚めたよう
昨日の轍さえ残っていないような
何もない路の上 線を描くように
人知れず足跡は消えていく
悴む手のひら 乾き白く憤る
それよりも妙な鼓動にかき消され
音を鳴らして掴むもの
それが孤独ではないことを確認して
朝昏の静けさはまだ醒めず
聞こえる音もまだ未熟
口から漏れた白色が後退り
それをただ楽しく眺め行く
見慣れ景色も物珍しく影を追う
足元を通り抜けていく君よ
弧を描くは無邪気故なのか
在りし日の背中を思い出し
暗闇を行く
次第に明けていく光を背に
私は微睡みの蜃気楼と共に
君の前を通り過ぎよう