灰色が遮って
晴れよりも曇っている方が
君の顔がよく見える
そう言うくせにいつも
うつむいて前を見ていない
すれ違う度に罪悪感を感じて
頭を抱え込んでいる
話してくれればいいのに
「これは僕の悪い癖」
呟いて目を合わさない
覗けば顔を背けるだけ
何をそんなに焦っているの?
大丈夫の裏側を
何を思い詰めているの?
平気の後ろめたさを
少しでも言葉にしてほしくて
握った手を君は驚いた表情で見ていたから
私も悲しくなった
「この手をどうか振りほどかないで」
ささやいた
何も言ってくれない君の笑顔
その後ろにあるもの
何一つ分からない
きっとこれからも分からない
それでも君の愛想笑いはもう見たくないよ
だから一言でいいから呟いてほしい
それで君のこと少しは知れた気にでもなれるかな
雨音が聞こえてきた
曇っているより雨が降っていた方が
君の声がよく聞こえる
雨音にかき消されているのに
言い淀む度に何かを噛み締めている
その鬱蒼とした顔で誰もいない方を向く
最初からそうだった
一度も手を握り返してはくれなかった
何をそんなに避けているの?
目も合わせてくれない
何をそこまで気にしているの?
覚えのない焦燥感に刈られて
詰まる言葉を無理に吐き出そうとして
嗚咽をしたらすぐに黙り込む君
土砂降りが洗い流すように
めんどくさいからそう言ってほしいのに
手を離すとすぐに不安気に僕を見て
でも愛想笑いだけで震える唇
何も言い出せない君を僕はどう見たらいい?
強く握りしめた手 君がまた驚いていた
向かう反らすを繰り返す君
でも離れることはなくて 手は上の空
あるはずの傘をいつまでも差さない
そのくせやっぱり僕の顔は見てくれない
掛ける言葉 返ってくる無言 雨音が強くなる
それでも君は何かを言いかけているように
言葉もない間が歯痒くて苦しそうで
僕は君の傘を差した 遮るような灰色を
雨音が当たる音 次第に消えていく
曇っていた方がよかったのにね
ふと出た君の言葉 でもまだ空は曇り空
少しだけ君は手を握り返していた