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造形という虚構
故に絵画には描かれずに
文字という概念だけで書かれる者たちは
いいようのない言霊を秘めている
造形された者たちは
皆に愛されて祝福される
こともあろうに自分のものだと主張して
他の者には与えぬようにする
それが造形という愛され方なのだ
見れば姿形を理解されて
触れれば虜にしてしまう
なんという安易で
驚くほど簡単な手法だろうか
対して言葉だけの者は
否定されて敬遠される
そこに自らの想いを入れることなく
あたかもそれがそこにはなかったように
目を瞑り無視する
それこそが言葉だけの愛され方なのか
姿形はなくて
触れることもできないこの者たちに
語ることさえ許し得ない絵師たち
何が違うのだろうか
概念は具現化しなければいけないものか
そこに答えを知るのはまさに
造形を愛する者たちである
言葉にならない造形は愛されて
言葉になる概念は否定される
言葉だけの概念は
大抵のものには理解されえない
それさえも理解されない言霊こそが
そこに確かにある現実なのだ