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デグレシオン
灼けた空を見上げた
口から灰色の煙を吐く
鉛の軋む音が酷く響いた
瓦礫の山の上から手を伸ばす
鉄の雨が降る中で
ただ明日を待っていた
画面越しの世界は狭く見えて
聞こえる声さえ疎らに途切れた
箱庭が静寂に支配されていく
自身の呼吸音 心臓の鼓動さえも
何かに置き換わっていくように感じて
突き上げた轟音が降り注ぐ
流れ星を描くように地上に堕ちて
機械油の混じった風が吹き抜ける
弾けた閃光の先に夜空が見えた
その果に何が見えたのだろう
孤独に苛まれて 幸福に蝕まれても
それは掌から簡単に擦り抜けていく
足元に溜まっていく残骸にいつか埋もれて
それでもまだ果ては遠いと
明けの空へ羽ばたく閃光を掴んだ
通り抜けていく鈍色の光が
街と呼んでいた場所に降り積もる
瓦礫の山の上 壊れかけの翼を広げた像
鉄の錆びる音と共に崩れ落ちて
灼け始めた空を見上げていた