星とおとぎ話と
旅人たちのおとぎ話
暗闇の先には無数の穴が空いていて
そこからたくさんの光がこぼれている
昔の人はそれを星と呼んでいた
真っ黒な空を指差して
その先にあるかもしれないね
おとぎ話が大好きな君が言った
いつか見てみたいな
その日から君がいなくなった
帽子をかぶって鞄を背負って
ドアの先に広がる暗闇
その先で君を探す旅に
行こう
決意とは真逆に震える歩幅
ランタンの灯りを頼りに
先のない暗闇へ行く
烏が鳴いた
暗闇が泣いた
見えないものが多いけど
残っているもあること
それがどれだけ大切か
狼が吠えた
暗闇が吼えた
傷つけ合いながらも助け合う
すれ違ってもいつかは側にいる
確かに生きていることを
追いかけっこのように
君の過去を追う
知りたかったもの
知りたくなかったことも
一つ一つ拾いながら
君が辿り着くいつかを追って
昔の町は語った
星の見える丘があると
おとぎ話の続き
空が落ちてきた話も聞いて
いつかは辿り着く結末の先
それでも見えない暗闇の中
ランタンの灯りをかざして
この狭い世界を歩く
その先で君に会えたとき
たくさん旅の話をするために
書き留めた日記を抱いて
まぶたをそっと閉じた
また会えますように
見たこともない星に祈る
ランタンの灯りは消えていた




