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夏暮れの影より
夏暮れ
桑楡からこぼれた
足元から伸びる影法師
追い抜いて行くのは誰の影
目を閉じたら暗闇の内から
思い出の残影が浮かび
茜を貫く飛行機雲
指を差して笑ったあの日の面影
ただ独り懐かしく思う
帰路のまだ途中で
移ろう景色
変わらないように見えていて
見えなくなっていったものも
色褪せたのか
鮮やかに見えていたのか
気付いたときの景色は物悲しくて
あの日に導かれて
迷い込むように
足元に落ちていく思い出たち
追い越して行く陽炎の痕
目を開いた先に鮮明に
手を振っていたのはいつの君か