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夕暮れの幸せを
赤信号のとき止まった一瞬
ふと見上げた茜色の空
焦がすように降り注ぐ色が
眩しくて 少し切なくて
綺麗だと呟く暇もないから
ただその一瞬を眼に焼き付ける
やがて走り出した閃光は
背後へと走り去っていく
青く点滅する進む先
焦げ付いた光が影を色濃く映す
走り抜いていく足元の影が
早く早くと子どものように
轍の音が酷く耳に刺さる
その後の静寂が少し愛おしい
浴びるほどの喧騒も今は
ただ夕暮れの中の影法師
歩く度一つ一つ コマ撮り見たいに
前から横へ通り過ぎる孤独感
それは寂しいものじゃなく
ちょっとだけ幸せな一人の時間
歩いていくノスタルジック
覚めていく夕焼けの中で
一瞬一瞬が朱く色づいて
子どもの影が手を振っている
追い越し追い越され歩いていく
鬼ごっこはいつまで続くだろう
緩んだ頬が少し気恥ずかしく
ちょっとだけ早歩き
後ろを追うように街灯がつき始め
星影のさざ波が揺れ動く
朱く澄んでいく地平線
最後まで色濃く今日を焦がした
やがて夜が訪れるその前に
玄関のドアを開けて ただいまと
私が入るよりも早く入った
かつての面影 廊下のライトに消えていく