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風が薫る
町を歩く
すれ違う雨の音
かすかに空から
曇りなく青く染まって
湿った道路から
灰色が滲み出る
手に持つ傘は上を向くことなく
地面をついて水溜まり探し
濡れた先端
跳ねる滴
まるで逆さの雨模様
天気予報は通り雨
見上げる先に遮るものなし
鳥たちが羽ばたいた後
青色は剥がれ落ちていく
少し強い風が背中を押した
ちょっとだけ早くなる景色
遠くの方に見えた灰色の君
手を振って持っている
翠が町を埋めるほど
雨の匂いは強くなる
憂鬱な気分かな
でも私は好きだった
ため息混じりの交差点
青信号が晴れ渡る
ぽつりぽつりと
透明な音が降ってくる
つかの間の陽射しも
木陰に隠れていくよう
天気予報は気まぐれだと
傘が羽根を広げた