600/667
ビールで流した蕎麦の味
かじかむ手をポケットに突っ込んで
白い吐息で遊んで帰る道
年の瀬 誰もいない通り道
妙に新鮮に感じていた
手からぶら下げた袋の中
インスタントの蕎麦を食べる
少し楽しみなこと
遠のいていく除夜の鐘を聞く
部屋のドアを開けてただいまと
暗闇の中から灯火一つ
電気をつけてやることやろうか
僕の残り時間が始まった
ケトルポッドに水を汲んで
付けたタイマー
やることリスト
めんどくさそうに始めたことも
気が付けば終わっているマジック
お風呂上がりの一杯と
カチッと鳴るアラーム
注いで待つ三分間
パソコンでも付けて動画を見ようか
マウス横手にカシャッと開けた
ビールでため息混じり
たどり着いた三分間
湯気と共に匂い香る
頂きますとすすり食べる
馴れていた味は少し
寂しいように思えた
年の瀬のこと
蕎麦の後味をビールで流す
酔い来ても忘れることはなく
また一つ夜明けを待った




