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明かりが灯るこの道で

 

灯籠の明かりが道を照らす

この道は無き人たちのための道


この時期になると

みんなこの道を歩く


小さな足で 大きな足で

揃いの足で 別れの足で

何かを得ようと 何かを求めて

この道を歩く


どうやらここはパワースポットらしいね

そんな素敵な場所じゃないのに

みんなは笑ってこの道を歩いて行く


それは微笑ましい風景であるけれど

それは寂しい光景でもあるんだよ


この道は無き人たちのための道

名前さえ忘れられた人たちの道

そのことをみんなは知らない

だから笑って歩いていけるのだろうか


あの人は何も言わない

この道は祭りの道

それ以外は知らなくていい


道の途中で出会った女の子

周りの人は誰も気付かない

通りすぎていく足に

私は寂しく思う


道の先から聞こえる祭り囃子

女の子はずっと見ていた

祭りを楽しみに来たのかな

行こうか 手を握って道を歩こう


祭り囃子は間近に

出店からいい匂い

祭りは大盛況だね

女の子はなお無言


どうしたのかな

女の子はいまだに口開かず

涙をひとつぽろぽろり

私の手を握りしめた

冷たいのに暖かい女の子の手


どこか行きたい場所はない?

女の子は指をさした

祭りの先の道

灯籠が灯す果ての道


そうか そうだね

祭り囃子は過ぎ去って

静かな蝉時雨が鳴り響く


道の先にある祠

この先からは君ひとり

私は手を離した


女の子は寂しそうに私を見る

大丈夫 これをあげるよ

手渡した鬼灯のお守り

私は女の子の頭をそっと撫でた


やっと笑った女の子

素敵な笑顔だね

それじゃあ さよなら


あ、君の名前は?


「明っていうんだ」

女の子の最後の言葉


忘れないよ絶対に



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