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海に死に
身体の力を抜いて
海月のようにたゆたう
さざ波の音色にさらわれて
砂浜から消えた私の足跡
静かな夜に解けていく
水面を走る渡り鳥よ
あなたもこっちにおいで
差し伸ばした手
白色から灰色に映ろう
渡り鳥は水面から飛びった
見上げた水面
その上に降り注ぐ夜の雨
月明かりにそそのかされて
青く濁る魚たち
一つ一つが道明かり
あの子のたちの通り道
歌声を聴く
遥か真下の暗闇から
あなたはこっちに来ないの
響く歌声はただ高く
いずれは遠のいていく
誰かが通った後の景色
遠く流されて漂って
どこまでも途切れることはなく
滴る夜の音にかき消されて
ゆっくり沈んでいく月明かり
空は緩やかに目を開く
照らされた水面の下
朱色の流星が暗闇を貫いて
浮かんでいく水の泡
息さえ白く鳥になる
伸ばした手を掴んだ
波間の黄金にさらわれて




