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青さに手を伸ばして
吹き抜けていく風を掴む
手のひらの隙間から青さがこぼれて
足元に広がる水溜まり
どこまでも空を写した
明日の方向に手を振って
鳥流れていく水平線
あの先に行けたならと
歩み始めた一歩はまだ遠く
抜かされていく青さに
その後を追い続けて
どこまでも続く道しるべ
まだその先に辿り着けなくて
手を翳した雲の形
切れ間から雫がこぼれて
また塗れていく
今でも手を伸ばせたら
足元に広がる鏡はいつか割れて
その後に残った欠片を数える
それはもう出来ないことだと
目の前の陽炎が肩を叩く
蝉時雨さえも雨の如く
青嵐が全てを塗り替えて
握りしめた記憶さえ飛ばされた
今もまた手から離れて
蜃気楼のように昨日が写る
その度に青く濁り薄れていく
見上げた空だけが変わらないと
忘れていた青さに手を伸ばした




