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春喰らう薫風

 

芽吹くことなく

花びらを散らした薫風よ

鮮やかな陽射しにさらわれて

まどろみの雨音に溶けていく


桜に埋もれることなく

コンクリートに剥き出した光が

明日の影を呑み込んで

真昼の雲間に降り注ぐ


温もりを感じることなく

流れていく

振り向けば陽炎が

背中を越して走り去る

それは足跡もなく

ただ現実のように


あの頃にあったものはなく

大きくなった目の前に

小さな石ころが転がる

街は轍に埋もれて

嫌いな程眩しい一閃が

瞬く間に景色を食べていく


春嵐は何も奪えず

そよ風の如く地平線へ消えていく

生い茂った緑が食い尽くす

いつか在った景色の残骸を

知らずに踏み潰す


枯れていく色を

今で塗り潰して

世界は何も変わらなかったように

夜が明けて

時計は回った


いつしか消えていった

色褪せた花びらを

あの日の残骸と共に

薫風が吹き飛ばす

まどろみの雨音は

いつしか消えていた

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