552/660
ため息エンド
一日が終わるとため息をつく
テレビもない部屋で
スマートフォンの画面越し
そこにある世界だけは
優しく見えていた
失敗も成功も
ここに来てしまえば等しく
意味のないこと
時計もないから何もない
ゆっくりと時間が流れ
私を真夜中へ誘う
子供には出来なかったこと
大人になって出来なくなったこと
どちらがよかったのか
束の間の狭間で
幼き問いかけを永遠に
やがて来る微睡みに
一時の幸福に身を任せる
対価は残り時間
烏が泣き止む前までに
またここへ戻ってきなさい
いつか見た景色が呟いた
ストーリーもモノローグもない
継ぎ接ぎだらけの世界を
覗き込むように見ている
手にした道具は価値なく
なされるがままに朽ちていく
記憶にも思い出も残らない
瞬きをすればカーテンから
麗らかな日の光が
影を焼き尽くす
ため息をもう一度
あの頃の幸せはもう
戻ってこないのだから




