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ケモノアメ
雨を食う
雲を食う
灰色の隙間から覗く光が
影を飲み込む
木々が鳴く
小鳥の囀りのように
吹き抜ける風が
騒めく
耳に刺さる
獣が歩く
道なき道に
草木を押しつぶして
水溜りが波を打つ
足跡を
滴る音が埋め尽くす
空から降る青色が
晴れのように
水溜りはいつも群青で
獣が行く
灰色からこぼれる光を飲む
宵は明けて
星が堕ちる
雲の中に隠れた
晴れ
獣が笑う
雲を食って
雨を食って
気が付けば灰色は溶けて
獣はただ笑みを浮かべる
歩く
行く
獣はどこまでも
また灰色を飲み込んで
空を食って
どこまでも
果て




