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梅雨が鳴く
地を濡らす雨の音
静かに影に落ちていく
足跡に溜まった水面に映る
灰色の空を見下ろして
獣は道を行く
木々は緑々しく風に揺れ鳴り
川のせせらぎが染み
降るる雨粒の音色が交じり
人はこれを歌という
獣の耳にはどう聞こえるか
獣はあくびをして
林の奥へと消えていく
木々が揺れる音も
川のせせらぎも
雨粒が滴る音も
この世界にとってはありふれた
普通のことだろう
その普通なことでさえ
人間にとってはきっと
素敵なことなのだろう
今年もまた雨が降る
灰色の空から青色の
音が降り注ぐ
色褪せた世界も少しは
鮮やかに見えるだろうか
梅雨が鳴く
灰色の空を見下ろして
獣も今は耳を傾けよう
いつに終わるか分からぬ
この世界が歌う音に




