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あたたかいおわりに
昇る陽は温かく
そよ風がほほを撫でる
行き先もないまま漂う
一閃を追って
視線は青空をさ迷う
遠い記憶の中で
霞がかかったように
遠退いていくもの
あの日に空にかざした手のように
また再びこの手は
何かを掴み取れたのだろうか
明くる朝に
堕ちていく夜に
私はいつも何かしらの願いを
ただ戯れ言のように祈る
それは決して誰も耳を傾けない
荒唐無稽なおとぎ話
開く明日も
閉じる今日も
ここからは何も変わらずに
いつしか記憶の中で佇んで
美しさの中で解けていく
ただ温かな忘却の中で
私は生きている
今抱く思いも明日には溶けて
何もなかったかのように
一日は終わるのだろう
手を差し伸べた先にあるもの
ただ青く白く滲む
自由な空に手を入れる
風を伝う環の中で
私はそっとまぶたを閉じる




