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残情
茜色に手を伸ばす
目を開けていられないくらいに
輝いていて
僕はそれを懐かしいと思った
いつからだろうか
いつもの景色に懐かしさを覚えたのは
何も変わっていないのに
あの日を置き去りにしたようで
どこか寂しさを覚えていた
隣を歩いていた人はもういない
今はただ一人の路
側を通り過ぎていく影法師
きっと誰もが歩く独りの路
朝焼けの眩しさも
夕暮れの儚さも
宵闇の静けさも飲み込んで
世界は移ろう
一瞬一瞬が変わっているのだろう
それでも私の見る景色は
いつも佇んでいる
今日もまたこの路を行く
同じ景色の中で1日が始まる
記憶もまた埋もれて見えなくなる
この景色に懐かしさを
それを忘れてしまったとき
私は何を覚えているのだろうか




