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エイエンノハナシ「無窮を越えて」
写真は色褪せて
文字さえ掠れた
ただ記憶の欠片が記された
古びた本は昔を語る
いつの日か夢見た現実は潰えて
今ある現実が顔を覗き込む
時間の流れは残酷だ
妄想に逃げることさえ許してくれず
ただ目の前にある真実だけを叩きつける
苦しんだ
悲しんだ
その積み重ねで心がすり減った
それでも今はやって来る
もう泣くこともないだろう
嘆くこともないだろう
繰り返される景色に埋もれても
もう自分を見失うことはないだろう
残ったものは何もないが
失うものもない
過去の亡霊の手を離して
ただ前を向いている
ふとした瞬間によみがえる
記憶たちに寂しさを覚える
温もりと墓標だけがここにある
それは確かに誰かが側にいた証
もう大丈夫だよと呟いた
足を掴む手はもうない
時間の中でまどろむ
何かに足掻いていた自分を見る
何かに脅えていた自分がいる
何かに怒りを向けていた自分が去る
続いてく命の中で
心臓は相も変わらずに鳴り続ける
永遠から始まった話
それはまだ終わらない
果てのない中で終わりを探す
それは変わらない
それでも心は生きている
望みを抱きながら誰かの手をつなぐ
どの時代でもきっと誰かが
側にいてくれると願って




