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A peaceful end.
手にふれた感覚も
イスの温もりも
いつかは消えてしまうものだ
冷たいコーヒーが私を写す
それは鏡のようで
淋しげに笑う私が覗く
こんなにも心地よいのに
物思いにふけてしまいそうだ
ここは静かだ
日常の喧騒も
非日常の騒動も
ここにはない
ただ緩やかに時間が流れていく
さざ波の音が
吹き抜けるそよ風が
どこまでも染み渡る
こんな時に何か楽器でも弾けたなら
きっと気持ちがいいのだろう
朗らかな紅色の下
湖畔の先で私が待つ
時計もないここは
世界が切り取られた場所のようだ
何もない時間が過ぎていく
夕闇に沈んでいく
目をつむれば覚めてしまいそうな
夢を見ているのだろうか
時計もないこの場所で
私は待っている
探すことも見つけることもせずに
ただ時間が流れるままに




