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A light in a dark room.#1
世界に夜しか訪れないとしたら
それは不幸なことなのだろうか
マッチも持っていなければ
外に出ることも
部屋を灯すことも出来ない
そんな世界は呪われているのだろうか
ランプを揺らして夜を歩く
星の明かりも月の影もない
暗闇が口を開けて待っている
手に持つ明かりが道になる
影を踏めば呑まれてしまう
前後も左右も分からない中で
佇む標に明かりを灯して
自分がここにいることを見る
幽霊でもいてくれれば
寂しさは紛れるのだろうか
歩く度に聞こえる足音が
周りに誰もいないことを告げる
獣の声も蟲の声も聞こえない
不気味な静寂の中で
ランプの小さな明かりだけが
心のよりどころ
歩く
不安にかられながらも
歩く
怖い気持ちを押し潰すように
手繰り寄せる
自分を見失わないように
世界は暗闇に呑まれる
遠い昔のこと
青空が溶けたという
それがこの世界の呪いだと
おじさんの言葉を思い出す
標に明かりを灯して夜を歩く
途方もない闇の中で
何を探すわけでも求めるわけでもなく
ただ旅を続ける
たった一つの夢を見るために
暗闇はまだ口を開けている




