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百鬼は列をなさず
今はもう昔の話で
暗闇から覗いていた妖怪たちも
ついには日の目を見るようになった
博覧会のようにあふれでた異形たち
その姿形にて本を作る
鮮明に描かれた妖怪たちは
まるで百鬼夜行のごとく
見るものを圧倒する
しかしそこには静しかない
動かない行列 切ればただの絵画に
妖怪は名前というラベルを貼られて
その意味をなくしていった
群れなす百鬼夜行に意味は在らず
ただ烏合の衆となす
姿形も目的も消費されるだけのもの
そこに暗闇から覗いていた妖怪いない
そこにいるのは吊るされた影法師
泡沫に消えていた方がまだいいか
姿を隠すもののけたち
それを掘り返す絵画たち
逃げる場所もなく叫ぶこともなく
百鬼は列をなさず
ただのツールと成り下がる




