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ナツイロール
蝉時雨の中
残照が道端に影を落とす
街灯が茜色に呑まれる
錆びた時計が宵を告げた
それはまだ夕暮れのこと
いつもの路を歩く
子どもの後ろ姿を見て
大人たちの前を歩く
心なしか足が軽い
吹き抜けるそよ風を避けた
足元に伸びる暗闇
空を見つめて手を伸ばす
一番星を指差した
掛け声と共に走っていった
断片が落ちている
そこかしこに皆の思い出が
あの日から今日までの
誰かが歩んだ路の上
同じ路 しかしながら歩幅は合わなく
大きな君と小さな君
いつの間にか忘れていた茜色
ふと足を止める
山の向こう 灰色が交ざる空
いつも見ていなかった
いつもの景色に私は
何を思い出せるのだろうか




