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懐古の路地
暮れが薄暗い路地を彩る
白霧の先 向こうから昨日が覗く
歩幅は広がって 足跡は大きくなる
いつか見た写真のように
色あせたイメージが視界を覆う
同じ景色も同じに見えず
背伸びをした影に手が届く
繰り返される街並みは遠く
夕暮れの暗がりが脳裏を焼く
君が見つけたあの路も
あの人が探した店もまだ
影も変えずに佇む
日常に埋もれた忘却をかすかに思い出して
歳月を重ねてこの街を見た
腕時計を見て 過去と同じ時間に
私が立った場所は 全てが収束した場所
未来のない私から 過去を覗く私へ
茜色の光は熱く 全てを焼き付ける
ああ、このような時間が確かにあった
私は暗がりの路地へと足を踏み入れる




