フューネラル
人間は死後あの世へ行くそうだ
では我々は死後どこへ行くのだろうか?
彼はそんなことをよく言っていた
化け物には死後の安息があるかと
ずっと考えていたそうだ
その問いに対して俺は
死後にあるのは永遠の暗闇だけだと
答えていたことを思い出す
青空が木漏れ日から染み出す
彼の寝顔を優しく照らす
鼓動は聞こえず 身体はもう冷たい
それなのに彼の寝顔は安らかだった
まだ夢を見ているのかい?
俺は彼のまぶたにそっと手を置いた
化け物は死後どこへ向かうのだろうか
俺は呟く 青空に溶ける白煙を見上げながら
その行く先を眺めながら 自身に問うた
重みがあった 彼の体の重みが
感触があった 彼の毛皮の感触が
御伽噺のように何かに変わることもなく
創作話のように消えてなくなる訳でもない
確かに彼は 鵺と呼ばれた彼はいたのだと
俺は改めて実感したのだ
やがて火は消える 白色の骸が燃え残る
彼だった者はない 歪な形がそれを語る
俺は骸を寄せ集めて木箱に収める
あんなに重かった彼はもう両手で持ち上げられる
その残滓しか残っていなかった
なあ、お前は今どこにいるのだろうか?
お前の答えは見つかったかい?
木箱に語りかける 答えるははずもなく
今はただ目をつぶって祈る
もしもあの世があれば無事にたどり着けるように
俺は暗闇に祈ったのだ




