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墓標の猫
五月雨が降る 霞が映える
耳に響く雨音は心に波を打つ
空を見上げれば曇り
まるで泣いてるような雨模様
静寂な杜にこだまする懐かしい声
一言二言で重なる思い出
亡くなったはずの猫
訪ねてきたのは二又の猫
彼女は寂しげな表情をして言った
一緒にお墓を探して下さいと
五月雨が降る 霞が覆う
空はまだ曇り空の中
雨音はいつしか消えて
水溜まりに足跡が残る
進む無縁塚 並び立つ無名の墓標
君の探し人はいたかいと
猫又は首を横に振る
彼方に眠る思い出を
彼女は探している
残る影 大きく歪んだ影
雨はやがて霧へと変わっていく
手を伸ばした先 思い出は
いつも届かずに何処かへ消える
眠る墓標は何も語らずに
名前さえ消えてしまった軌跡の中
猫又はただ探す
代わりになるものはない
外れに眠る墓標
そっと手を置いた猫又は泣いた
見つかったかい? 見つかった
名前のない墓標を猫又は抱く
遠くの記憶 太陽のように
いつしか霧は晴れて
久遠が目を覚ます
懐かしい君が笑顔で手を振った
残る影 小さな足跡
おやすみ 今度は離れずに
いつしか空はまた曇る




