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痛みのための傷
手を握ると赤い色彩が揺らめく
ほほを伝う感触 言葉にするのも下らない
誰かが裏で笑っている
自分を演じたい道化師なのだと
誰も私について知らないのだ
眩しさで目が眩む
座る椅子もないから倒れる
真上の世界は晴れ晴れで
まるでほほ笑んでいるようだ
暖かな光が私を包む
その裏で影が私の手を握った
走り抜けていくものは言葉にならず
私であることを思い出させてくれる
癒えないものはない 心でさえも
故に今私が感じているものは偽物だ
痛みという工程 なくなるという肯定
それは私が人間であるという証
すり減っていく心に確かに残ったもの
偽物だらけの中で唯一 信じられたもの




