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背広姿の鏡

 

「ねえ、君はどうだった?」

鏡越しの自分(ぼく)が問いかける

「その答えはきっと同じだよ」と

背中合わせの僕が呟いた


青い春は桜を散らして

涙を拭いて別れたあの日

背広姿の鏡を見て呟く

少しは大人になれなたのかなと


合わなくなった靴と

揃わなくなった歩幅

通っていた路はもう

思い出の中に埋もれていて


青空に届くあの声はどこまでも

響いて 溶けて 思い出を語る

あの日の影法師が僕らの背中を押すんだ


一歩 一歩 また一つ歳を取る

今はどうかな 学生服と比べて

その背中はきっと大きくなっている


昔目指していた場所に立っている

今の僕は昔には戻れない

大きなった手はまだ何も掴めていない

握りしめた拳が小さく見えた


背負わなくなった鞄と

使わなくなった筆記用具

あの日の記憶は埃を被って

部屋の片隅で埋もれているんだ


青空に届かないこの手はいつまでも

伸びて 下って 思い出を捨てている

あの頃の影法師が笑っている


背広姿の鏡が手招いている

「君はもうそこにいるべきじゃない」

俯いた僕が引き止める

「君はまだここにいるべきだ」


大きくなって 背中を見ても

拳を見ても まだ小さい

それでもまだ途中なんだ

僕はまだどちらにも行けないよ


合わなくなった靴と

揃わなくなった歩幅

通っていた路はもう

思い出の中に埋もれていて


青空に届くあの声はどこまでも

響いて 溶けて 思い出を語る

あの日の影法師が僕らの背中を押すんだ


一歩 一歩 また一つ歳を取る

今はどうかな 学生服と比べて

その背中はきっと大きくなっていた



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