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銀嶺の狐火
銀嶺の麗しに陽炎が佇む
その揺らめきは暖かく
目の前に積もる雪を溶かす
足元に広がる空色の水たまりは
鏡のように蒼穹を写している
吐息は冷たく
白煙は銀嶺に溶ける
陽光を照らす白銀の景色
それは眩しく
私は目を反らす
足跡は埋まり
振り返る先もない
あの陽炎を目指して歩む
寒冷に心身を震わせ
手を重ねて温める
吹き付ける風は凍え
過ぎて行く路は途方もない
それでも陽炎はまだ揺らめいている
まるで彼方の蜃気楼のように
銀嶺を歪めて景色を彩る
紅色に 茜色に
赤色に 橙色に
知っているはずの世界が
知らない世界に見えていた
銀嶺の麗しに陽炎が佇む
その揺らめきは暖かく
とても眩しかった
これは白昼夢なのだろう
私はほほ笑んで呟いた




