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sunnyline.
薫風が桜を撫でていく
地面に落ちた花びらが溶けて
いつしか山は緑色に染まっていた
雨の香りと温かな兆し
狐の嫁入りが始まった
傘を差さずに歩く帰り道
折り畳み傘でも持っていればよかった
身体を濡らす雫
視界を埋める空色の
ああ、でもこれは意外に
綺麗なものだね
やがて雨が止んでずぶ濡れの
僕が水たまりに浮かんで揺らめく
ああ、これはみっともないね
僕は濡れた髪を上げてまた歩き出す
それはいつもの帰り道のこと
でもちょっと違った日の話
こんな日もたまにはいいよね
濡れた髪は暖かかった




