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The fragments remain.
最後に泣いた日はいつだろう
最後に怒った日はいつだろう
見上げた傘の向こう側に見える雨
憎らしほどに澄んでいた
憧れていた人がいた
その人の笑顔はとても素敵だった
しかしもう顔は思い出せない
地面を流れる水面に映る影
ぼやけて見えるその人は
今でも笑っている
こぼれ落ちていく
一つ一つ何かが消えていく
その度に僕は笑っている
またあの人に近づけた
足元から伸びる影も笑っている
しきりに降って来る澄んだ雨
頬を濡らして冷たいよ
最後に悲しんだ日を忘れた
最後にうつむいた日も忘れた
年月が過ぎていく度に何かが抜けていく
でも何がなくなっているのだろう
それすらもう分からない
あれだけ降っていた雨も今は止んで
空には空色が広がっていた
それでも憎らしいほどの青色が
僕を哀れむようにほほ笑んで
あの人のように笑えているかな
地面の水面に映る影
それは紛れない自分の笑顔
ああ、笑えているよ
自分の笑顔を見間違えて
僕はまた何かを失った




