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Furthest.
届くことのない空に手を伸ばして
あの星を掴もうとした
指の隙間からこぼれた光の眩しさを
私は今でも覚えていた
暗闇の中を歩いていく
今ではもう慣れてしまった
しかしあの頃はきっと心を躍らせていた
大きな手を握りしめて歩いたこの道
真上の世界はいつも輝いていた
過去の私が通り過ぎていく
同じように空を見上げて
今よりもずっと早くずっと遠く
暗闇の中へと消えていく
小さな目で見た景色
大きな目で見た世界
同じ空なのにこんなにも違うのか
私は空に手を伸ばす
手のひらからこぼれた光
まだこの眩しさを忘れてはいなかった
月影が瞳を覆い
星屑が眼を彩る
あの頃のように心は躍らなかった
それでもこの空を
私は綺麗だと思えるのだ




