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ムルザムの追録
どちらが正しいのか
それは呪いか祝福か
シリウスの名は未だに続く
強いられるわけでもない
ただ私が選択すれば終わること
一言いえばそれでいいのだ
イエスかノーか
ただそれだけのこと
ノーといえば私はこのまま
そこで名は途絶える
ただ歴史の中に埋もれて
どこかの本に記されるだけの話
イエスといえば私は変わる
私は先となって生きることになる
歴史を受け継ぎその先を埋める
そして私の名前は空白に消えていく
それでも何かが変わる訳じゃない
この先も今の生活が続いていくのだろう
変わるのは名前だけ
私は私のままで変化はない
それなのになぜ私は未だに答えを出せない
どちらの選択をしても変わることはない
名前が変わる
それだけなのに
どうして躊躇っているのだろうか
自分の名前に執着があるわけじゃない
先代の名前に思い入れがあるわけでもない
だから渡しにとってその選択は
簡単に答えられるはずなのに
私は未だにその選択肢を選べない
なぜか
なぜだろう
自問自答を繰り返す度に
出る答えは異なる
その度に私はまたため息をついた
私に託された選択は
呪いか祝福か
私が選ぶのは
未来か過去か




