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深淵で眠る
たゆたう暗闇の中で
ただ目を閉じて深淵を覗く
眠るように繰り返される夢の中
今見ているものは幻か
月を見た 黄金色に輝く月を
星を見た 黄金色に輝く星を
蒼い深闇の中に差し込んだわずかな光
それもまた夢の中で見ていることか
静寂に包まれる底に
風はただ吹き抜けていくだけだ
冷たい感触はやがて生温かくなる
それは眠るような感覚だった
いつか見た記憶 暗闇の中で投影される
弟よ 私はここにいるよ
届かぬ声をただ夢言のようにぼやく
眠る先 静寂に包まれた暗闇の先
たゆたう底で私は眠る
ただ暗闇の中で繰り返し映る記憶を見て
今日もまた深淵に沈む




