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あたりまえの壊れた景色
閉じた扉の先で 何かが壊れた
音 立てて 崩れていく
それなのに涙も出ない僕はここ
ただ空を見上げて立っている
流れていくもの いつも通り過ぎて
すくい取っては隙間からこぼれる
降り出した雨も僕に当たらずに
足元の隙間へとあふれていく
まるで僕はここにいないよう
歩き出した暗闇 下に遡る青空で
僕はイスに座ってただ見ています
背中に寄りそう影を笑って
僕はイスに座ってただ笑っていました
去っていく 過ぎていく
ただ風が吹き抜けていくだけの景色
感じたもの 何か あったのかな
僕はそっと目をつむる
暗闇の中に積み重なった暗闇が
ただ崩れていくだけでした
懐かしさはなく 後悔もない
ただ終わってしまっただけと繰り返す
手に残るドアノブの感触
見れば掌は単なる掌でした
当たり前 当然 ありふれたこと
ただ何かが壊れて崩れていった
大きなことも小さなことも
過ぎていくだけの景色でした
閉じた扉の前で僕一人
全てをなくしても涙も出ない
そんな僕はきっとただの自分
また新しいことを手に入れるだけ
それだけの景色が広がるだけでした




