303/667
無月
見えずとも手を上げる 握りしめた隙間の光
月さえない夜のこと 暗闇を頼りに歩いていく
揺れる水面に滴る音 澄んだ風がさらっていく
しきりに降り続ける霞が遠く その先へ手を取っていく
昔に歩いたこの路も 今では見えぬ夜の中
流れていく灰色の 雲は星をかくしまう
街灯もない海岸沿い 影の後ろ姿を追っていく
夜霧に紛れた月明かり 光が微かにこぼれている
影の足跡を辿って背中を追う
離れて近づいて 追い越すことも出来ないか
足音はやがてさざ波に 呑まれて泡沫 静寂に
解けていった流星 吸い込まれそうな闇を見る
夜を写す水面にこぼれる 光が深く沈んでいく
歩いた後 波に消されて戻れずに
前の路 夜霧に紛れて遠く見えず
どこに行くのか ただ流れるままに
見上げた先の暗闇に 手をかざして掴んだ光
足跡が続いて 闇の中に入っていく
さざ波は揺らいでこぼれる 深淵に差し込むもの
手を伸ばして掴み取った 微かな光が隙間から
月のない夜のこと 私は暗闇を歩いていた




