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のこりうた
何もなかった今日は
いつしか何もない明日へ変わる
平穏なまま一日が終わる
ただ君を残して
心に言葉を
いつか忘れてしまうのだろうか
白煙が溶けた向こう側
愛しき人はただ笑う
遺された言葉
残らなかった明日
悲しみに暮れて
声も出ないはずなのに
それでも涙は流れてくれない
心ばかりが泣いていて
身体は何も喚かない
まるで人形のようで
きっと感情を失っていた
君が笑う写真を手に取って
青空を見上げた
明くる朝
薄暗い部屋の中で
懐かしい言葉を呟いた
僕に出来た唯一の手向け
君の好きだった言葉を送ろう
震えだした声
やっと涙がこぼれた
僕はきっと
君を愛せてはいなかった
ただ残ったのは
懐かしい君の優しい言葉だけだった