背中を追う犬の話
いつのことの話かな
昔のお話 悲しいお話
ある町に二人の男女
一緒に住んでた犬のお話
二人は仲のいい夫婦
優しい二人 犬も愛されて
何一つ不幸はない
幸せな日々を過ごしている
散歩をして 日向ぼっこをして
一緒にご飯を食べて 二人の笑顔が大好き
犬はしっぽを振って 二人についていく
好きだから 大好きだから
犬は二人の後をついていく
怒られた日も ケンカをした日も
二人の後を追い続ける
しばらく経って一人が見えなくなった
優しかった女性が見えない
男性は哀しい表情で犬を見る
どこにいったの どこに行ったのかな
犬は首をかしげてしっぽを振った
またしばらくして一人見えなくなった
優しかった男性がいなくなった
犬は首をかしげて動き回る
気がついたら二人とも見えなっていた
どこへ行ったのかな どこを探しても見つからない
匂いは途切れて 足跡はなくなって
追う背中はどこに 犬は探す
一緒に遊んだ公園を
一緒に出かけた路を
思い出を辿って戻っていく
二人はきっとあそこで待っている
二人の背中が自然と見える
その後を追いかけよう
追いかけた先に何かの光
潜り抜けるとまた同じ場所
振り向けばまた二人の背中
また追いかけて繰り返し
しっぽを振って 走り続ける
霧を抜けて 霞を超えて
何度も何度も背中を追いかける
そしてやがて見えなくなる
気がついたらまた同じ場所
また探して追いかけて
何度もくぐり抜けた光が消えた
辿り着いた先 見知らぬ森の中
前を見たら二人の背中
やっと見つけた 追いかけてまた消える
暗闇の中を走って また違う暗闇の中へ
もう光はない ただ見える二人の背中
その場を超えて 間を横ぎって
どこまでも いつまでも
二人の背中を追って永遠に




