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何もない路
目を開いた先 何もない路がただ続く
景色は白色に紛れ 見渡す限り灰色が広がる
先ほどまで見えていたように思えた景色
そんなものは始めからなかったことを知る
ああ、私は何をなくしたのだろうか
途方もなく無に近い そこには何もない
片手に握りめられていたのは単なる鉄くず
私はここで何かを見ていたよう気がする
空いた手を見ながら何かを探していたことを思い出す
それはなんだろうか
私にそれにとても心地よいものを感じていた
あれはなんだったのだろうか
その感覚だけが余韻のように響く
泥に塗れた手を裏がして甲を見る
何かが見えた気がした
目の前を見た
何も変わることはない
私は無気力にその路を歩き始めた
求めるものなどない
探すものも忘れてしまった
ただそれでも俯くことだけはない
ただ目の前を見て歩いている
灰色の地面を踏んでどこまでも続く
無に近い場所をさまように
その中で私は新しい何かを予感した




