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九十九神の祭り
「三月三日は何の日かな」
暗闇の中で聞こえるささやき声
小人の影が蠢いていう
「あの日だよ」
「あの日だよ」
しきりに聞こえる物音が
何かが始まることを告げる
襖の隙間見えたもの
人形たちの歩く姿
無表情で動き回る人形は
笑いながら台座を回る
「私はここに」
「私はここに」
座ってまた立ち上がって
「私はここだ」
「私はここだ」
やがて影はどこかへ向かう
音は鳴り止んでしばらく経てば
また人形たちはやってくる
今度は服を着て
「私はここに」
「私はここに」
「三月三日は何の日かな」
「三月三日は何の日かな」
一年に一回だけの大舞台
人形たちは無表情のまま
楽しそうに笑っている
少し早い人形たちのお祭り
今日だけはそっとしておこう
閉めた襖覗く瞳
「今年もちゃんと飾ってね」




