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燈の瞳
残照は山の向こう側
あちらを見れば暗闇が
角灯を片手に歩いていこう
狭間の時間は流れていく
茜色の光が木漏れ日に
手を伸ばせば届くだろうか
光は指先からこぼれ落ちる
人は里へ
獣は山へ
私はここへ
そこは社へ続く道
紅い明かりがやがてつく
一つずつ灯籠に光を灯そう
また一つまた一つ
角灯から明かりを分けて
彼らが迷わぬように
やがて暗闇が訪れる
影は歩き陰はほほえむ
明かりを持ったものたちが
過ぎていく影
やって来る陰
そこにあるのは日常で
宛もないものがやって来る
彼らはどこへ行くんだろう
影は社を過ぎていく
その先は暗闇の
何かが眠る場所
影はやがて過ぎていく
帰り道はあっちだよ
指差した鳥居の方
彼らが迷わぬように
道に燈火の明かりを




