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スカビオーサの雫
僕らの誓った明日が終わった
どうかその手を離してくれないか
君はそっと手を離す
僕らの道はそこから別れた
昨日までがずっと昔のように
残照のように記憶に焼きつく
君と歩いたこの道も
もう歩くことはないんだろう
ほほを伝う感触を拭って
僕はそっと呟いた
ありがとう、さよならって
その言葉をいえればよかった
重い明日が始まって
誰もいない部屋が騒がしい
まだ耳に残り続けている君の声
かき消すように誰かにおはよう
変わっていないはずの風景が
なんだか歪んで見えている
空模様は大雨です
本当は雲もないのになあ
鳴らない携帯電話を気にして
1日が過ぎていく
もう終わった関係なのに
心の底で誰かが呼び掛けているんだ
君か僕か知らない誰か
もういいじゃないか
僕らの関係はここで終わり
その先に道はないはずなのに
どこまで進んでも後戻り
分かっているんだこれが後悔だって
ほほに伝わる感触を拭って
僕は昨日歩いた道を歩いていた
夕立がやけにうるさいなあ
響くのは鳥の鳴き声で
身体にあたる雫が冷たい
雲もない雨が降ってきた




