239/661
永遠が朽ちる
風が止み、水面が揺れる
月が堕ち、星空が瞬く
手からぶら下げた懐中時計
止まった針は永遠を示す
どこまでも続く水平線
歌を歌って歩いていく
波を輪を描いて広がっていく
その後ろに道ができた
誰もいない海の上
鳴り止まない静寂を
手で掬って拾っていこう
青色の雫が隙間から落ちていく
手の上に映った真上の色彩
光が差して闇が薄まる
静寂はやがて鼓動へと
手から星が落ちていく
音を立てて輪が広がる
風が吹き抜け空がなびく
目をつむって手を広げる
揺れる懐中時計が動きだす
地球が生まれた
生き物が芽生えた
花 (きせき)が咲いた
空が広がった
水面に伝わっていく鼓動が
世界を清澄に
回り始める連鎖の円環
そして永遠が朽ちていく




