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竜は飛ばない
折れたら翼が音を立てる
それはまだ空へ行こうとする意思
しかし身体はもう動かない
既に埋もれ朽ちている
明くる月が照らす空
双眼はまだ向こうを見据えている
あがけばあがくほどに羽根は落ちる
それでも竜は構わないと翼を広げた
廻り廻ろうこの空を
誰かが愛したこの闇を
私は駆けよう流星となって
這いずる足はもう重い
叫ぶ咆哮は言葉にならない
落ちていくのは朽ちた懺悔
傷だらけの翼を羽ばたかせ
空の向こうを目指して今行こう
風を起こして真上の世界へ
どれだけ羽ばたいても風盛り
少し浮いたそして落ちる
既に飛べないことなど分かっているのに
私は飛びたいこの空を
いつしか見たあの景色をもう一度
飛ぼう飛ぼうあの向こう側
形がやがて壊れて失せる
廻り廻ろうあの空を
皆が愛したこの闇に
私は駆けよう流星となって
そして流星は墜ちていく




